美味しいものが出揃う秋。中でも和菓子によく使われるものは「栗」、そして「さつまいも」といったところでしょうか。ふと思い立って、『さつまいもの茶巾絞り』を作ってみることにしました。
以前は、「さつまいもをただ形づくっただけでしょ?」と思っていたのですが、かの魯山人がこよなく愛した手作り和菓子だと知り、俄然興味が湧きました。身の回りのもの全てにこだわり、特に陶器に造詣の深かった人が、その食器にのせる食べ物にうるさくないはずがないからです。
さて材料は写真の通り。「さつまいも」と「砂糖」と「豆乳」、そして今回は茜丸の「レモンあん」も使います。これを真ん中に入れようと考えました。お料理で『さつまいものレモン煮』というメニューもありますからきっと合うでしょう。豆乳の代わりに「牛乳」でも問題ありません。砂糖は「さとうきび糖」です。コクのある甘さが好きで愛用しています。ちなみにこれでチャイを作ると最高に美味しいですよ。
まずはさつまいもを皮ごと厚めの輪切りにして蒸し器で蒸します。もちろん、レンジでもOKです。蒸し時間は15分ほどで写真のようにきれいな黄色になり、やわらかくなりました。ポテトサラダもじゃがいもを切ってから蒸すより、丸ごと蒸してから皮をむく方がほくほくふんわりした食感になりますから、そのまま蒸したらできあがりが違ったかもしれません。
そうそう、切り落としたさつまいもの端っこを、水を張った器に入れてみました。数日で芽を出し、葉っぱが出てくることでしょう。そのまま庭に植えればさつまいもが増えるかもしれませんし、お子さんといっしょにきれいな緑の葉っぱが出てくる様を眺めるにもいいでしょう。その場合、水はマメに取り換えてくださいね。
あとは茶巾で絞ります、と言いたいところですが、茶巾なんて風流なものは持っていません。それで最初の写真にあったように、ガーゼでできた布巾を用意してみました。奈良からのお土産でいただいたものです。これを使っていざやってみると、厚いためか絞られて付く模様が実に豪快なのです。絞るだけでは力が伝わらないのでギューッと捩り上げなくてはいけません。でも、開けてみるとこれはこれでいい感じかもと思いました(写真下)。
ただ、いわゆる茶巾絞りのイメージとは少し違います。そこで急遽、ハンカチを使ってみることにしました。綿製の薄めのハンカチです。中央にさつまいもをこんもりのせて、レモンあんを中に仕込んで、キュッと絞ります。ハンカチのしわがそのままさつまいもに残ってています(写真下)。
皆さんはどちらの感じがお好みですか? ガーゼの布巾で絞ったものは、その凹みややわらかな感じからひよこがイメージされます。絞った後で端を少しつまむようにして広げればくちばしの形になったかもしれません。
薄いハンカチで絞ったものは、細かくて繊細な線がつきますから植物が連想されます。むらさきいもとさつまいもでつくれば菖蒲やあやめに見立てることもできそうです。
それぞれの中でも特にきれいな形になったものを厳選し、銘々皿にのせてみました。こちらはガーゼで絞ったもののベスト1(青い皿)・2(白い皿)です。
偶然にも、ひとつはひよこのような形になっていました。さつまいもの皮の切れ端がまるで目のようにも見えます。もうひとつは特に何かをイメージすることはできませんが、なんとも素朴でいかにも手作りのよさが出ていませんか。
こちらは薄いハンカチで絞ったものです。ひとつはちょうちょが羽を広げたような筋がつき、もうひとつは花びらのように丸く広がって筋がついています。きれいな放射状にしたかったのですが難しかったです。ハンカチでなく茶巾でしたらもっとうまくできるのでしょうか。
さつまいもの茶巾絞りは作るのがまず簡単です。さらにその後、できあがった形をいろいろに見立てて楽しむこともできます。かの魯山人さんも、お茶会にお招きしたお客様のことを思いながら楽しんで手作りされたのかもなどと勝手に気持ちを共有させていただきました。
ちなみにこの『さつまいもの茶巾絞り』、冷凍しておき、お弁当に入れてもいいそうです。女の子は特に喜びそう。今は息子のお弁当しか作りませんが、今度入れてみましょう。彩り的にも黄色できれいになりますね。
さて肝心の味はというと・・・レモンあんとさつまいもの相性は最高でした。レモンあんを生地にも入れたためか、おにぎりの具のように中に入れたレモンあんとさつまいも生地がしっくりなじんでいました。いかにもおいもといった味が薄まり、さわやかな甘さの和菓子になりました。
さつまいもそのものの味を楽しみたいのであれば、安寧芋などもっと濃厚な甘みのある種類で作ることをオススメします。中に入れるあんこは「焙煎黒ごまあん」あたりでいかがでしょう。味が濃厚で真っ黒のあんこなので、生地には練り込まず少なめに中に入れるとよさそうですね。
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