今、老舗和菓子屋が舞台になっているドラマが和菓子好きの間で話題になっています。人気俳優のファンである若者だけでなく、視聴者を幅広い層へ広げるために和菓子も貢献していますね。あんこ広め隊の私としては、「和菓子ブーム来た~!」と嬉しい限りです。
そんな折も折、インスタグラムで「フラワー錦玉」を見つけました。前々から透明度の高い夏のお菓子「錦玉」には惹かれていました。その「フラワー錦玉」の花の部分があんこで出来ているとあっては、「放っておけない! 作ってみたい!」と、すぐに思いました。あんで出来た繊細な花が透明な液体の中に浮いているんですよ、素敵でしょう?
ということで、その「フラワー錦玉」をご指導くださるgreen*greenの吉岡先生のところへお邪魔してきました。兵庫県西宮市にある閑静な住宅街の中のお宅で洋菓子や和菓子を教えていらっしゃいます。「初めて出会う先生はどんな方かしら・・・」と、ワクワクして伺いました。
で、終わった後の感想を一言で言うなら、「何だったんだ、この勢いは?」。まるでスポーツを終えた後のようなやりきった感! そう、かなりのパワフルご指導でした。楽しかったです! また行きたいです、元気を貰いに(笑)。
さて、3種のお菓子の作業工程は冷やしたり、焼いたりといった時間が必要なものもあれば、乾いてしまう前に成形しなければならない、練り切りもあります。ですから、実際には並行して少しずつしていったのですが、お菓子毎に簡単に書いてみます。
お目当ての「フラワー錦玉」は、まずは白あんに色を付け、細い涙型の口金で絞り出しながら花びらを作っていきます。イメージとしては、カーネーションの花びらをひらひらと小出しにしていく感じ。ケーキ作りが得意な方にとっては、とっても楽しい絞り出しのひと時です。
が、私は必死でした! それでも先生に褒められ上手に持ち上げてもらいながら、ひとつふたつと作っていくと段々上達していきます。全部で6つの花を作るのですが、同じデザインの花にならないように、また様々な技術が体験できるように考えられています。花芯にあたる部分のドットの絞り出しは上手く出来ずに終わりましたが、そんな悔しさも次への成長につながるのでしょう。
先生は作り方だけでなくお菓子に関する知識も授けてくださいます。「寒天は砂糖が入ることによって光の反射が起こり、透明になります。あんみつに入っている寒天が白いのは、砂糖がないからですよ」。光の反射が目に入ってくるから透明・・・ふむふむ、と瞬間、理系脳になりました。インスタで見る透明度の高い綺麗な錦玉は砂糖が入っているから、ということですね。
出来上がった花は、寒天とアガーの混合液の中に沈ませます。寒天もアガーも植物性ですが、食感が寒天は硬く、アガーはゼリーに近い柔らかさがあり、固まる速さはアガーの方が速いとのこと。そんな特性から考案したオリジナルだそうで、混ぜる割合は企業秘密?
確かに固まるのが早く、またゼリーと違って常温でもへたらないので、持ち帰るのにも最適とのことでした。様々な面からよく考えられていますね、本当に感心しました。
この「フラワー錦玉」は、花の色と味を自分で選ぶことができ、色付けも味付けも天然のこだわり材料が用意されていました。私は緑とピンクの花にしましたが、他の方はピンクと黄色、紫とオレンジなど選ばれ、好みがそれぞれ違いました。手作りならではの楽しみですね。味についても「ライチ」、「ピーチ」、「アップル」、「オレンジ」等、たくさんの種類が用意され、迷った末にマスカットと先生おすすめのミントにしました。
帰ってから早速食べましたが、しつこくない甘さ(先生の言われた量をちゃんと守りましたから)で、寒天アガーと共に、滑らかなあんこが口の中に広がり、とても美味しかったです。ミント味はあんことしっかりマッチしていて少し意外でした。ということは、ミントあんこもあり!?
焼きが必要な「栗饅頭」はまずは生地作りから。卵たっぷりでほんのり黄色なので、焼く前から美味しそう。中は白あんと栗の甘露煮で、栗、白あん、生地と三層になります。栗らしく形を尖らせたものと、コロンと丸いものとを2種作りました。栗をイメージし、頭を尖らせるのが楽しかったですね。「指の跡がつかないように!」と、そこはピシッと一言入りました。はい、先生!
「練り切り2種」については、簡単にいえば、求肥と白あんを混ぜて練り切りの生地を作り、それをいくつかに分け、それぞれに色をつけるところまでが準備。その後は高い技術が次々と繰り出され、全力疾走で駆け抜けるかのように計4個を作りました。
などと書くと大変そうと思う方もいるかもしれませんが、他の方々は涼しい顔をして作業されていましたので、どうぞご心配なく。それに色をぼかしたり、多種類の色を合わせた生地で茶巾しぼりをしたりと、ひとつひとつの手作業はとても楽しいものなんですよ。
特に最後の仕上げの型抜きと焼き印押しは、子どもに還ったかのようにワクワクしました。紅葉の型抜きは大小さまざま用意され、ひとつのせようか、ふたつのせようか迷いました。また、秋らしいトンボの焼き印は押す時はドキドキしましたが、きちんと綺麗に凹んでくれてホッとしました。
でもこの美しさも、練り切りが柔らか過ぎたら上手くいかないでしょうね。事前に何度も試作を重ね、ちょうどいい硬さを研究してくださったに違いありません。先生に感謝!
こうして「栗饅頭6個」、「練り切り4つ」、「フラワー錦玉6つ」が完成しました! 内容や数からどんなに精力的なものだったかご想像いただけるでしょう。でもいくつか同じものを作ることによって、ひとつ目よりもふたつ目と少しずつ上達することができ、嬉しかったですよ。こんな短時間で成長を感じさせてもらえるなんて流石です!
こうして、初めに書いた感想のような全力疾走&やり切った感が味わえる、green*greenのレッスンが終わったわけですが、実は今回は特別な和菓子コースの単発レッスンだったそうです(知らなかった・・・)。「通常のレッスンはゆったりとじっくりとしていますよ」とのことでした。
初級の私がいきなり中上級に飛び込んでしまったにもかかわらず、先生もトップギアで頑張ってくださっていたわけですね、ありがとうございます。次回機会があれば、私は通常レッスンに参加させていただきます。先生の楽しいおしゃべりももっと聞けるでしょうし。
この日は、充実した楽しい時間を過ごせた満足感と、たくさんのお菓子を共にお持ち帰り出来ました。栗饅頭は家に帰ってからもほんのり温かく、皮がサクサク。これが手作りなんですからもう嬉しくて! そして、冷蔵庫には透明で美しい錦玉が並び、冷凍庫には秋を感じる練り切り(食べきれないときは冷凍してもよいそう)。「豊かさってこういうことなんだな」と一人ゴチましたよ。
さて終わってみての感想は、手の平や指先を使っての作業がいかにも日本的で楽しいと思いました。洋菓子やパン作りは泡立て器を使ったり、手で大胆にこねたりと何かと力技がいりますが、和菓子は全体的に手でする作業が多い印象です。
そして、和菓子の楽しさはなんといっても、季節をお菓子で表現するデザインであり、材料であること。今回のお菓子「栗饅頭」はまさに秋ですし、華やかな「練り切り」も紅葉の意匠が素晴らしく、まさに芸術の域ですね。まだまだ暑さも残る気候を考慮しての「フラワー錦玉」も季節の変わり目である今にピッタリです。こういった気の遣いようは茶道に通じるものがあります。和のものは全てつながっているんですね。
そうそう、今後は和菓子に力を入れていくということをお聞きしていたので、茜丸のあんこをお持ちしましたよ。『極上白あん』、『爽快ラムネあん』、『太陽のトマトあん』の3種です。爽快ラムネあんについては「あの有名な・・・」とインスタグラムでつぶやいてくださいました。バイヤーの間でも話題になった目の覚める!?ような色は、やはり珍しいのでしょうか。
「どんなふうに使おうかなぁ、楽しみ!」と喜んでくださってよかったです。特に新しく発売されたばかりの『太陽のトマトあん』は、どのように使われるのか私たちもとても楽しみです。
吉岡先生、ありがとうございました! お疲れさまでした。また、宜しくお願い致します。
【業務用あんこ販売店】
◆『極上白あん』
◆『爽快ラムネあん』
◆『太陽のトマトあん』
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