京菓子展。全国からテーマに沿った和菓子を創作、出品し、そして審査され、それらを見せてくださるイベントです。2022年のテーマは『枕草子』でした。「ものがたりを食べる」という副題がなんとも素敵です。
美しくディスプレイされた和菓子たちは、ひとつひとつが芸術作品そのもの。工夫や思いが感じられるものばかりでした。去年訪れた時には、たまたま制作者と出会い、完成までの迷いや思いを聞けたことを思い出しました。
和菓子に限らず、何かを創作する職人さんたちは特別な思いをその創作物に込めデザインします。意を匠の技によって表現する。だから、制作されたものに対し、「意匠」という言葉が使われるのかな、と勝手に想像してしまいました。
さて今回の京菓子展(京菓子展 2022 枕草子)では、たくさんの若者たちに出会いましたよ。
ひとつのグループはデザイン系の勉強をしているのではと思われる学生たち。薄く、そして曲線を描く<50グラムの立体造形>に感心しきり。皆のスマホのカメラが忙しく働いていました。お菓子としてより作品として見ているようでした。それもよしですね。
もうひとつの別のグループとはお茶席で同席しました。きちんと正座し、若者らしいリラックスした感じと落ち着いた静かな場で若干の緊張感を漂わせている様子に好感を持ちました。そして、何より嬉しかったのは、運ばれてきたお菓子やお抹茶を心から楽しみ、和室のしつらえひとつひとつを眺め、体感し、感激していることでした。日本らしさのルーツとなるものを正しくきちんと残すことは大切だ、とそんな彼らの様子を見て思いました。
今回、私がお茶席でいただいたお菓子は「薯蕷(じょよ)饅頭」です。饅頭の表面に描かれた絵の美しいこと! なんて愛らしい鳥たちでしょう。食べるまでにしっかり目を近づけて見ました。アップで見ても鑑賞にたえうる精密さでしたよ。
饅頭の皮は薄めで、あんこがみっちり入っていました。あんこ好きにはたまりません。ほどよい甘さ、滑らかさ、そして、美しい赤紫色。饅頭皮の白とのコントラストが綺麗でした。美味しく頂戴いたしました!
同席者が多かったので、今回は様々な茶碗の説明を聞くことができました。小池百合子東京都知事が絵や字を描かれたもの、イギリスのサッカー選手ベッカムが来日された時に使われた京焼の茶碗など、もてなしの一環として茶道は今後も残っていくのだろうと想像できます。私の前に置かれたものは魯山人の茶碗とのことでしたが本物でしょうか。ツッコミはひかえました。
和菓子の材料や形、色は無限にあると改めて思った京菓子展(京菓子展 2022 枕草子)でした。今回知りましたが、デザイン部門と実作部門があるようです。イメージを形にするのも大仕事、それを菓子として作り上げるのも大変なことだとも考えました。
でも和菓子の場合は、食べものは食べもの。最終的においしくなければ、という究極のゴールがあります。「それがいいのでは?」などとも思いましたよ。今回の薯蕷饅頭もお抹茶も本当に美味しかった! やっぱりあんこは最高!!です。
日本文化が体感でき、芸術作品も鑑賞できる京菓子展。今後も続いていくこと、その時代の空気をまとった作品が創作されることを期待します。
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